民法と信託法の関係

信託に関する法律である「信託法」は
民法の特別法にあたります。

これはどういうことかというと
民法と信託法で同じ内容について違う規定がある場合、
信託法が優先される、ということです。

これにより、民法の規定ではできなかったことが、
信託という方法で実現できるようになりました。

1. 認知症になっても柔軟な財産管理を継続できます!

  • 元気なうちは自宅で暮らしたいが、認知症や身体的に不自由になったら、自宅を売却して施設に入りたい
  • 相続税対策のため、老朽化したアパートを建て替え賃貸マンションを建てたいが、建設途中で判断能力が低下しないか心配

このような高齢者による財産管理は、認知症になるなどすると後見制度を利用することになりますが、後見制度では本人の財産を維持する方向で「保守的に」されるので、積極的な財産運用などはできなくなります。

しかし、信託を利用することで、認知症になったあとも継続して柔軟な財産管理が可能になります。

2. 今までできなかったような相続ができるようになります!

  • マンションのオーナーさんが、認知症の妻を心配し、自分の死亡後は、マンション賃料を生活費にしてもらうためマンションを妻に相続させたいが、妻の死亡後は、長男に相続させたい
  • 遺産が賃貸不動産しかなく、長男に相続させる遺言をのこしたが、二男から遺留分請求されると、長男には資力がないため、代償金支払いのため賃貸不動産を売却するしかない
  • 飼っていたペットがきちんと生きていけるような相続
  • 浪費家の娘に定期的にお金を渡すようにする相続

自分が亡くなった後の二次相続に関して、その意思を反映させることは民法では難しいことでした。

また、民法には、相続する人の期待をある程度保護する「遺留分」の規定などがあり、遺言を書いても必ずしもそのとおりの相続が叶えられるとは限りません。

しかし信託を使えばこれが可能になると言われています。受託者を長男として管理処分権を与え、受益者を長男・二男とし遺留分を確保できる程度の受益権を二男にも一部与える信託が考えられます。

ただし、東京地裁平成30年9月12日判決にて、後継ぎ遺贈型受益者連続信託において「遺留分制度を逸脱する意図で定められた信託条項の一部につき、公序良俗に違反して無効である」とされました。

信託のスキームを検討する際には、遺留分を侵害しない内容にするか、別途遺言により遺留分を確保しておくべきです。

3. 柔軟な事業承継スキームを作ることができます!

  • 自分がオーナーを務める会社があり、現在副社長である長男に、そろそろ社長の座をゆずり、経営を任せる予定。株式も株価が下がるタイミングで少しずつ長男に譲渡していきたい。

信託の制度により、上記のようなオーナーの思いをくんだ、各企業や家族の事情に寄り添ったスキームを作ることが可能です。