「信託」とは、例えば、委託者がその所有する不動産の名義を受託者に移転し、受託者がその不動産を貸し出すなど、管理をして家賃収入を、その家賃収入を受益者の子に生活費として渡してもらうというように、一定の目的を定めて委託者の財産を受託者である他人に移転して、その管理、処分など一定目的の達成のために必要な行為を受託者に行ってもらうことです。
信託には、その目的と仕組みにより、3つの種類があります。
委託者と受託者の間で、契約を結んで信託をはじめること。
最も基本的な信託の形態です。
高齢の親の財産を運用するため、 親が委託者、子が受託者となり、子が財産を運用するといった場合に、よくこの契約信託の方法が使われます。(信託法第3条第1項)
遺言書に「委託者の死亡により、信託を発生させる」と記載することで、信託行為を遺言により行うこと。(信託法第3条第2項)
委託者自身が受託者となって信託設定をすること(信託法第3条第3項)。
自己信託では自身が受託者になるので、債権者を害する目的で利用される恐れがあることから他の信託とは別に規制があります。
例えば、自己信託の設定方法は公正証書その他書面(信託法第4条第3項)または電磁的記録により行わなければならないなどです。
信託法 第3条 (信託の方法)
信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。
- 特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
- 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法
- 特定の者が一定の目的に従い自己の有する一定の財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為を自らすべき旨の意思表示を公正証書その他の書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)で当該目的、当該財産の特定に必要な事項その他の法務省令で定める事項を記載し又は記録したものによってする方法
信託法 第4条 (信託の効力の発生)
- 前条第一号に掲げる方法によってされる信託は、委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。
- 前条第二号に掲げる方法によってされる信託は、当該遺言の効力の発生によってその効力を生ずる。
- 前条第三号に掲げる方法によってされる信託は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものによってその効力を生ずる。
- 公正証書又は公証人の認証を受けた書面若しくは電磁的記録(以下この号及び次号において「公正証書等」と総称する。)によってされる場合 当該公正証書等の作成
- 公正証書等以外の書面又は電磁的記録によってされる場合 受益者となるべき者として指定された第三者(当該第三者が二人以上ある場合にあっては、その一人)に対する確定日付のある証書による当該信託がされた旨及びその内容の通知
- 前三項の規定にかかわらず、信託は、信託行為に停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件の成就又は当該始期の到来によってその効力を生ずる。
次は家族信託の典型的な信託の仕組みについて解説します。