信託のデメリット

家族信託には以下のデメリットがあります。

損益通算ができないという問題がある。

租税特別措置法第41条の4の2①に「信託財産である不動産から生じた損失はなかったものとみなす」旨の規定があります。
不動産を複数もっている方が、一部不動産を信託財産とした場合に、信託不動産から出る損失と、信託以外の他の不動産所得との損益通算ができなくなるので、課税される額が多くなってしまいます。

また、信託契約が複数ある場合、別個の不動産信託契約間の損益通算もできません。例えば、賃貸アパートAを信託契約Xで、賃貸マンションBを信託契約Yで別々に信託を組んだ場合に、Aの年間収支のプラスとBの年間収支のマイナスとの損益通算ができないことになります。

長期的な契約になるため、自分で信託契約を設定するのは危険。
専門家に頼むべきなので、それなりに手間とコストがかかる。

信託は自由度の高い契約ではありますが、内容次第で、当事者を何十年も拘束する契約です。自分自身で契約の中身をどうすべきか考えることは大切ですが、自分では気が付かない落とし穴がある可能性があります。
司法書士や弁護士に契約の中身を相談し、間違いのない内容を作成することが肝心です。そのため、家族の意見を取りまとめたり専門家に相談したりするなどある程度の手間と、専門家に支払う報酬が必要になります。

家族信託は現在、最先端分野。そのため、専門家がまだ少ない。

「信託」という仕組み自体は歴史の古い仕組みです。
しかし、家族信託のような自由度の高い事ができるようになったのは、平成18年に信託法が改正された後のことです。
最先端の法律分野であり、造詣が深い専門家も少ないのが現状です。信託契約を専門家に頼む場合は、実績などを確認すると良いでしょう。

非常に長い間、当事者を縛る仕組みである。

これまでご説明したとおり、信託の仕組みは作り方によっては、何十年にも渡って当事者を拘束するものです。契約後に起こりうることなどを勘案しながら、信託の仕組みを作る必要があります。
信託をした場合に後で後悔することがないよう、よく考えることが必要です。

また、信託契約自体は、委託者および受託者の2者間の契約、あるいは遺言による信託であれば遺言者一人で作りますが、その信託内容は、長期にわたる財産管理や資産承継であり、当事者だけでなく、その家族にも影響するものです。

したがって、家族の想いも大事にし、本人の希望を実現するためにはどのような信託がベストか全員で話し合うなど、家族の理解のもと進めることも必要です。